あのさー

町田康の『くっすん大黒』を読み、くくく、と湧き上がってくる笑いを押し殺しながら電車に乗っていたところ、女子高生2人組が僕の隣に座り、大きな声で喋り始めた。ああもううるさいな、とイライラしてたが、耳に入ってくる話が、

「あのさー」
「んー? なにー?」
「あのさー、最近さー、ぶっちゃけマジつまんないんだけど、毎日」
「あー。わかるわかるー。マジつまんない。何にもやる気しないし」
「そーそー。もう最近さー、学校でノートすらも取らなくなったよ。面倒だし、あんなのとったって何の意味もないし」
「勉強とかほんとしたくないよねー」
「勉強とかマジ意味ないよねー」
「将来とか何もないよねー」
「ないねー」
「ほんとやる気しないよねー」
「しないねー」
「なんか楽しいこととかないのかなー」
「あたしはもうそーゆーのの期待とかもしてないし。夢とか希望とか、マジ馬鹿じゃね?」
「だよねー」

って、そんな話で、楽しそうに見える彼女らですら、毎日がつまらないと感じているのか、とちょっと驚いた。みんな、つまらないんだなあ、と思った。夢とか希望とかないんだなあ、と思った。それらは一体どこに行ってしまったんだろう。