さらば、ベルリン

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レーナはガイズマーの何故そんな風に生きる?という問に対して「生き残ったから」と答えている。生き残らなければよかった、とでも言いたいように。そして生き残った者はこうあらねばらない、という姿勢で街を暗躍する。そうせずにはいられなかったのだろう。でも、たとえどれだけレーナがろくに愛していない夫を助けたりといった「美しいこと」をしたとしても、彼女の過去というものがなくなってしまうわけではないし、過去の出来事を克服できるというわけでもない。それを克服できるのはそれが起きたときだけだ。「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない」舞城王太郎の短編熊の場所にこのような言葉が出てくるが、まさにその通りなのだ。けれど。
理屈ではそうだとわかっていたとしても、そのように考えて今を好き勝手に生きれるほど楽じゃない。こんなことをしても何になる、と思いつつもそれに絡め取られてしまう。理屈ではガイズマーに寄りかかることもできたレーナだったが、実際にはそんなことありえない話なのだ。雨の中、一人飛行機に乗りベルリンを去る彼女の後姿が、深く印象に残っている。