バニシング・ポイント

DVDパッケージの裏面に「デンバーからカリフォルニアまでをわずか15時間で走りきるという、とてつもない賭けをした」と、コワルスキーの爆走がさもその賭けが原因であるかのように書かれているが、それはちょっと違うんじゃないかと思う。一応その賭けを軸に物語は展開しているものの、その賭けは、その賭けでなければいけなかった、という種類のものではない。ではなぜコワルスキーはあんな馬鹿げた走りをしたのか、ということになるが、そんなの簡単で、ただ走りたかったのだろう。もちろんそこに至るまでの過程で、コワルスキーも色々な経験をしてきているわけであって、それらが彼の爆走に全く、1ミクロンも関係ない、などと断言する気はさらさらないけれども、直接的な原因は何なのか、と考えたときには、おそらくそれらは直接的な原因には該当しないんじゃないか。ただ、たまたま普段のように車を運ぶ仕事があって、そこにたまたま賭けの話が頭に浮かび、結果、あの爆走につながった、という、それだけのことだと思う。口に出したり物に書き留めたりして外部に出す思いや考え以外にも、色々な、とめどない考えや思いが頭の中にあって、さらには自分では気づきもしないような無意識の何かとかそういうのも多分あって、それがごちゃごちゃになって、人間というものができている。そのごちゃごちゃはごちゃごちゃだからこそごちゃごちゃしているわけであって、そこから何が飛び出してくるのか何てことはわかるわけもないし、その中から適当な理由を見つけ出すなんてことは、誰かがそれを4択問題にでもしてくれない限り無理だろう。だから、ただ走りたいから走った。それだけのことだし、それで十分なのだ。
しかしバイクに乗った真っ裸の女の子が出てきたときには思わずひっくり返りそうになってしまった。真っ裸でバイクに乗る理由なんてわかんねえってば!