ヴィーナス

昔はぶいぶい言わせてた俳優のモーリスもすっかり歳をとってしまって、今では近所の喫茶店で友人のイアンとぐだぐだする日々。そのイアンの元に姪のジェシーがやってくる。モーリスは何とか彼女とお近づきになろうと、あれこれと行動する、という話。
友人イアンの姪であるジェシーが、モーリスに対して容赦ないところが実にいい。鏡を前にして2人が立っている場面のときの、ジェシーのあのスピードの乗った鋭いエルボーはめちゃくちゃ痛そうだった。手術直後の人間にあれはないんじゃないか、と思わずにはいられないが、でも、彼女のそんな容赦ないところも、それはいわゆる、若さ、というものなのであって、モーリスにとっては嬉しかったんじゃないだろうか、なんて思う。痛くても。
ただ、この映画を観ていると、若さと老いというのは決して対極にあるものではないように感じる。三つ子の魂百まで、とはよくいったもので、自分を振り返ってみても、そりゃ背が伸びたり体重が増えたりはしたけれど、考え方の基、というか、核のようなものは何ら変わりない気がする。少なくとも、自分が小さい頃に想像していた大人(の年齢にもはや自分は到達してしまったのだが)というイメージに対し今の自分は遥に遠い。昔のイメージの中の大人になんて一生なれないんだろうな、などと最近は思うし、実際なれないのだろう。モーリスは今もカッコいいし、きっと昔も相変わらずカッコいい。あんな風に歳をとりたいものだが、無理なんだろうな、と思うし、これはこれでまあいいのかな、とも思う。
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