フローズン・リバー

渋谷のライズエックスで観た。面白かった。アメリカとカナダの国境付近にある川を舞台にして、とある違法行為の手助けをすることで報酬を得る貧しい白人女性レイとモホーク族(北アメリカの先住民族)の女性ライラの話。
この世の中のルールがいかに男性(あるいは家族における「夫」といってもよいか)を基準として作られているか、そしてそのルールがいかに女性(家族における「母親」)を縛り付けているか、ということがとても印象に残った。それはアメリカもモホーク族の居留区でも変わらない。ルールによって、家の手付金やテレビもとりあげられてしまうし、子供は夫の両親に渡さざるをえない。しかし、生きていくためには家やテレビは必要だし、母親は子供と一緒に生きていかなくちゃいけないし(生きていきたいし)、そのためにはお金がいるのである。そうやってギリギリのところで生きていた2人はルールを乗り越えていく。たとえ乗り越えたくなくとも、そうせざるを得ないから。
レイ役を演じるメリッサ・レオの鬼気迫る演技がすごい。若干「幸せな家庭というのはこういうものだ」という脅迫観念めいたものを持った母親をこれでもかと演じきっている。ただ、そのような鬼気迫るまでの子供への思いによって、ライラの心も動いたのだろうし、車の中でのあの奇跡も起きたのだろう。
母親というものの力強さ、貧しさとは何なのか、ルールというのは誰のためにあるのか、といった様々なことを考えさせてくれるよい映画だった。