レ・ミゼラブル

すごかった、という言葉が一番しっくりくると思う。冒頭の船を引くシーンから最後のシーンまで、目を離す暇もないくらい引き寄せられた。映像と歌の引力とでもいったほうがよいだろうか、そういうものが確かにあった。ジャン・バルジャンにせよジャベールにせよ、またあの少年たちにせよ、その根底にあるのは神への、なんというのか、信念?そういったもので、彼らは誰もみなずっと幸せに暮らしてきた人はいないのに、それでも神を信じ続け、その信念に従って行動し続け、ときには命をも落としてしまう。そこまで信じられるくらいに個人レベルで浸透するこの「神」ってのはほんと何なんだろうなと不思議に思った。あきらかに日本の神社にお参りにいったときにお願いをする先にいるであろう神とは違う気がする。でも、そんな「神」がいることは頼れるもの、指針となるものがあるということだから、きっと生きやすくなるんだろうなと思う。ジャベールは自分の行いにやや疑念を抱いている風なときもあったけど、そんなときは「厳密に法に従うこと=正義=神への忠信」だと思い込むことによって自らを正当化していたもんなあ。そんな風にときには人を盲目的にさせる恐ろしい側面がありつつも、でも、人に確かな力、行動を伴わせるような力を与える「神」というものを、僕は持っていないし、たぶん、これからも持つことはないんじゃないかなーと思う。「神」を持つ人たちから見たら、「神」を持たない人の生き方ってどのように映るんだろうか。気になる。