Ever17 -the out of infinity- Premium Edition クリア

日本の観光地の中で「日本三大ガッカリ名所」というものがある。札幌の時計台、高知のはりまや橋、沖縄の守礼門の3ヶ所がそれにあたり、日本中の誰もが知っている観光地だが、実際行ってみると非常に小さかったりして、観光客ががっかりすることからそう呼ばれている。僕自身はこの3つの中で札幌の時計台にしか行ったことはないが、確かに自分の想像していたものよりは小さかったように思う。それではなぜ観光客ががっかりするという事態が起こるのか。答えは簡単で、多くの噂や情報によってかき立てられた想像力が一人歩きをしているからだ。マスメディアの発達により、様々な情報を簡単に入手できるようになり、自らの目で実際に見たことがないものに関しても知ることが出来るようになった。だが不特定多数に向けて発信される情報は細部が削られ、誇張されていることが多い。そしてそういった情報を入手した受け手は、また別の受け手にその情報を誇張して伝達する。それが繰り返されることによって肥大化した情報がどんどん一人歩きを始めるのである。そんな肥大化した情報を手に入れた観光客たちは、自分が訪れたことのない場所にあたかも行ったことがあるかのような感覚を抱き、自らの中にイメージを作る。そして実際にその場所を訪れたときに、実体と自らの内部にあるイメージとのギャップに驚き、がっかりしてしまう、という訳である。
さて、僕はEver17というゲームも、そんな「日本三大ガッカリ名所」のように噂や情報のみが先行してしまっているゲームなのではないか、などと思っていた。なぜかといえば、とにかく賞賛の声しか耳にしなかったからだ。「素晴らしい」「いいからとりあえずやれ」「今年最高のゲーム」など、Ever17は絶賛の嵐だった。天邪鬼な僕としては、簡単にそれらの言葉を信じることは出来なかった。だからあまり期待などは持たずにプレイし始めた。
プレイ後17時間位経って4人のキャラクターをクリアした。この時点での僕の評価は「足回りのいい普通のゲーム」という程度だった。ああ、やっぱりこんなもんか。と、僕は札幌の時計台を観る観光客のような気分になっていた。まあでもせっかくここまでやったんだから最後のキャラクターもクリアするか。そう思ってココ編を始めた。
2時間後、食い入るようにしてテキストを追う自分の姿があった。一文一文をしっかりと咀嚼しながら読み進めた。僕は明らかに興奮していた。今までの4人の話は壮大な前振りに過ぎなかったのだ。複雑に絡まりあった糸が解けていくかのように放置されていた謎が一つ一つ解き明かされていく。エンディングを迎えたとき、もうこれで終わりなのか、とゲームが終わってしまうことを残念に思った。それぐらい僕は熱中していた。これほどゲームに熱中したのは久しぶりだった。
今、僕“も”まだこのゲームをやっていない人に言いたい。「いいからとりあえずやっとけ」本当に。マジで。

  • 総プレイ時間:23時間
  • 好きなキャラクター:茜ヶ崎空
  • この話の真のヒロインは空なんじゃないでしょうか。内容的にも。