SYOUKOUGUN GIRL SAYONARA

僕が毎日利用している駅にも、他の駅と同様にキヨスクがあって、たまにそこでガムとか新聞を買ったりするのだが、大抵はいつもその前を通り過ぎながら改札に向かっている。そのキヨスクにはちょうど僕の目の高さのちょっと下くらいに、文庫本コーナーがあって、通り過ぎるたびにその棚に並んでる本が目に入ってくる。ほとんどの場合は何気なくその棚に並んでるタイトルを眺めながらそのまま素通りするのだが、2週間ほど前からずっと僕の目を引き付けてやまないタイトルの小説があった。それが、美少女症候群 (マドンナメイト文庫)であった。普段ならそのような小説など目にも留めないのだけれども、なぜかこの本だけは僕の気を引いた。性的な意味での興味、というよりは、何故か気になる、というような感じだった。症候群という言葉が、僕の好きなゲーム、トワイライトシンドロームと被っていたからかもしれない。その本を気にしだしてから、毎日その本の横を通り過ぎ、通り過ぎるたびにどのような話なのだろうか、などという妄想をしていた。その本が減っている様子はなかったので、補充している可能性も多少あるかもしれないが、多分あまり売れてはいないのだろう。売れていない、と思うと、どういうわけかあの本のことが可愛そうに思えてきた。表紙の若干老けた幼き少女が僕に何かしら訴えかけてきているように思えた。助けを求めてきているように思えた。家に帰った僕は、ビールを飲みながらキーボードを叩きつつ表紙の彼女のことをぼんやりと考え、そして、次の日あの本を買うことに決めた。でも、翌日。まあありがちな話だが、すでにその本はなかった。きっと返本されてしまったのだ。僕はしばらくその場でその棚を眺めていたが、じきにその場を離れ、そのキヨスクでロッテブルーベリーガムを買った。小学生の頃、大好きだったガムだ。口の中に入れると、昔と同じ甘酸っぱさが口のなか一杯に広がった。僕はその甘さを味わいながら、改札へと続く階段を、一歩一歩上っていった――