イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/02/10
- メディア: 単行本
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とにかく色々な登場人物が登場するが、それらの登場人物に対する「私」の距離感が絶妙で、いい。近すぎず、遠すぎず。太陽の周りを回っている9つの惑星が、あるとき一列に並び、そして次の瞬間には離れていく。この作品を読んで、そんな場面を想像した。「私」は、人と人とは決して完全にわかりあえない、という諦めにも似た確信を持っていたのではないかと思う。人と人との間に存在する宇宙空間。決して越えられないもの。それがあの距離感に表れていたのではないだろうか。「私」のもとに人々が集まってきたかと思うと、みんな去っていってしまう。「私」はそのことについてよくわかっている。十分にわかっているんだけど、でも、それでも悲しくなる。
「雨だった。」で始まる最後の一節。この物語をしめくくる実に素晴らしいラストだと思う。
とても面白い作品だった。おすすめ。