パパパパパロディ

「つまりさ、僕が言いたいのは、……ねえ、マリオ3って知ってる?」
「うん。知ってる」
「そりゃよかった。あれでね、笛ってあるじゃない?」
「あるある」彼女は笛を使ったときに流れる曲を口笛で吹いた。
「そうそう、それそれ。それでさ、笛を2回続けて使うと一気に1面から8面にワープできるんだ」
「……そういえば、そうだったかな」彼女は彼女の中のどこかに存在するはずの遠い記憶を思い出すかのように、斜め上にあるライトを見上げた。
「それでね、僕が思うのはこういうことなんだ」
僕はそこでいったん言葉を切り、グラスを口へと運んだ。
「1面からずっと苦しい戦いを乗り越えて8面に行きピーチ姫をクッパの魔の手から救ったマリオと、2回続けて笛を使って8面にワープしてピーチ姫をクッパの魔の手から救ったマリオとの間に、何か違いがあるのかってね」
彼女はしばらくの間考えた。
「……うーん。よくわかんない」
「実はね、この話には続きがある」
僕は少し間を置いた。
「見事結ばれた2組の恋人たちは、それぞれ幸せな長い長い時を過ごしていた。それはもう長い長い時をね。それでね、ある日、この2組の男女は、いまや観光地になってしまったクッパ城の前で偶然出会ってしまうんだな」
「何それ」彼女は笑った。
「悲しいけれど、つまり、そういうことなんだよ」

そう。そういうことなんだ。