蛇イチゴ

蛇イチゴ [DVD]

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いい加減な兄と生真面目な妹という両極端の兄弟が主人公の家族ドラマ。母親が介護をしていたおじいちゃんが亡くなったのをきっかけに、「絵に描いたような、普通で、幸せな家庭」が一気に崩壊していく、という話。昨日観た映画(森田芳光監督『家族ゲーム』)に引き続き、たまたまこの作品も家族をテーマにしたものだった。
序盤の学校の場面、朝、「お母さんが病気だ」という理由で水槽の掃除に来ない生物係の男の子マスダ君を、まるで自分が当事者であるかのように糾弾する女の子。もう一人の生物係の女の子の正義の代弁者を気取って。いるいるああいうやつ。それを受けた倫子(つみきみほ)は、その子のことは軽くスルーするような感じで、もう一人の生物係の女の子ナカタニさんにマスダ君のことをどう思うか尋ねる。「わかりません。」そして、掃除に来ない男の子に対して「嘘はいけない」とか、そういうことを言う。そこでナカタニさんが言う。「先生、マスダ君のお母さんは本当に、病気じゃないんですか?」
倫子は代弁者気取りの女の子を軽く見ているような印象を受けたが、実際は彼女と同じなのだろう。事実を確認しようともせず、自分の考えを正しいと思い込み、それに外れたものは悪いと考える。一面的な見方。事実追求の放棄。なぜそんなことをするのかといえば、多分そのほうが生きるのに楽だからだろう。色んなことを考えながら50年生きるほうが、自らの考えのみに依存して何も考えず5000年生きるよりずっと大変なのである。『風の歌を聴け』にそんなことが書いてあるが、まさにそうだ。倫子はナカタニさんを理解しようともしない。思い通りの反応を示さないナカタニさんのことを、わからない、とか、怖い、とか言う。自分の中の生徒のイメージにナカタニさんが合致していないから受け入れられないのだ。それは久しぶりに帰ってきたいい加減な兄(宮迫博之)に対しても同じである。それくらいに倫子がある意味強情な人間だからこそ、最後のあのシーンがとてもいいものになっているのだろう。
「本当」とか「真実」という言葉の意味や、人間というものの様々な面について色々と考えさせてくれる映画だった。このようなことを考えさせてくれるのは、きっと登場人物が人間として、いや日本人としてそれぞれとても上手く描かれていたからだと思う。面白かった。