バグダット・カフェ
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2003/04/25
- メディア: DVD
- 購入: 8人 クリック: 146回
- この商品を含むブログ (199件) を見る
この映画を観たあとで、小学校3年生の時に僕の通っていた小学校にやってきた転校生のことを思い出した。彼はそれほど饒舌な人ではなかったので、初めの数日くらいはずっとよそよそしい感じでみんなと付き合っていた。でも、だんだん彼がどのような人物か分かってくると、話も弾むようになり、放課後も遊んだりするようになった。僕は彼の家に行ったりもした。ファミコンソフトも貸してもらった。数週間ほど経った頃にはもう初めのよそよそしさが嘘のようだった。彼はすっかり僕らの仲間になっていた。
しかし、ある日突然、本当に突然、彼は学校に来なくなった。先生も理由がわからないらしく、困惑していた。家に電話をしても繋がらなかった。一家で夜逃げをしたのだ、などという噂も流れたが、真相はいまだ分からないままだ。彼の不在は僕らのコミュニティにそれなりの影響を与えたが、時の経過と共に彼についての記憶が薄れていくにつれて、僕らのコミュニティは彼がいなかったときの状態へと再び戻っていったのである。
この映画では、彼女は再び戻ってきた。戻ってきた彼女をバグダット・カフェのみなは歓迎し、再び受け入れた。彼女の不在は彼らにとって耐え難い、辛いものになっていたのだ。彼女はすでに彼らの家族になっていたのである。
もしかすると彼も帰ってくることがあるのだろうか。そのとき僕は一体どのような形で彼を迎えることができるのだろうか。わからない。ただ、そのときには、いまだ返せずにいる、借りたままのファミコンソフトを彼に返したい。どんな言葉と一緒に返そうか、考えている。