夜、メダルゲームで。

中学の時のとある友人から連絡があったので遊んだ。会うのは成人式以来。かなり久々だ。食事をしながら話を聞くと、彼は最後に会った成人式の頃から3年間近く働きもせず学校へも行かず、いわゆるニートだったそうである。「ぶっちゃけニートってどうよ?」と、ついこの間まで現役ニートだった友人に尋ねてみると、「いやー、まあ。アレだよ。飽きる飽きる。普通に。やることねえし。働かなきゃ、って思うね。3年も何もしないと」と言っていた。飽きるのかー。そうかー。今、ちょうど入社式までのカウントダウンが始まっており、働きたくないでござる度が極限に達している自分としては、ニートになれるもんならなりたいぜ!って感じなのだが、やっぱりニートも楽じゃないんだよなあ、と話を聞いて思った。ニートにはニートの辛さや悩みがあるのだ。当然だけど。自分の悩みにばかり目がいっていると他人の悩みが見えなくなる。独りよがりになる。気をつけないといけない、と思う。
その後地元のゲーセンへ行く。夜にゲーセンに行くことなんてほとんどないのだが、思っていたよりも大勢の人がいて、ちょっと驚いた。その中には家族連れもいて。騒々しい店内を、幼稚園とかそれくらいだろうか、小さい子達が走り回っている。アーケードゲームというのは、お金はかなりかかるけれど、でもそのぶん家庭用ゲームでは味わえないような楽しさがある。けれど、あんな小さい頃からお金のかかる遊戯に興じていたら、癖になるんじゃないのかなあ、とか。そんなことを思ったりしたが、それは余計なお世話というものだろう。僕は僕の、彼らは彼らの人生をそれぞれ生きているのだから。
1000円でメダル80枚。メダル1枚=12.5JPYである。なかなか高額だ。なにかいいゲームはないものか、と探していると、競馬ゲームがあった。SEGAのゲーム機。その友人とは昔ダビスタ好きが高じて競馬話に花を咲かせていたこともあって、意気揚々、そのゲームをやることにした。「この馬はこのレースには距離適性がない」「全体の脚質を見たら、ここは追い込み一気でガチ」「いや、このレースは重馬場だから追い込み馬にはきつい。前残りだな」BETしつつ、互いにそんなことを言い合っていると、いつのまにか手元のメダルはなくなっていた。ダメ予想屋としての才能を遺憾なく発揮したようだった。ぎゃふん。頭を抱えつつ、ふと横を見る。煙草をふかしながら、おっさんが座っている。彼は毎回数百枚近く当てていた。目の前の少年もだ。なんであんなに当てられるのか。初期投資の問題なのか?いや、しかし…。と、敗北感に打ちひしがれつつ、家に帰った。
あそこでもう1000円行かなかったことは英断だと思うけれど、でもそれが自分自身の、なんというか、限界とでも言うか、中途半端な部分なんだよなあ、とも思う。