けいおん!

普段自分はそんなにドラマやアニメなどは観たりしないんだけど、今は先日述べた『湯けむりスナイパー』というドラマとあと『けいおん!』というアニメを毎週とても楽しみにしている。3話から観始めたので、最初の方はちょっとよくわからないものの、高校に入学したばかりの4人の女の子が、軽音部に入って楽しくやってる話、と言えば大体合ってると思う。
けいおん!』の何が楽しいって、唯や律や澪や紬が、ああいう日々のたわいない出来事で笑ったり泣いたり怒ったり叫んだりしてるのが、どうしようもなく楽しい。彼女たちにとってはそれだけがもう生きることのすべてで、時が止まってるかのごとき錯覚を覚えるような。
最近、仕事を終え会社を出るたびに何だか自分が歳をとっていっているような気がしていて、時には仕事中に缶ジュースを飲んでそれが喉をつたっていく、その瞬間にすらそう思えるときがある。村上春樹の『風の歌を聴け』のなかに登場する、脊椎の神経の病気で入院して3年目の17歳の女の子は、ラジオ番組への手紙の中でこんな風に言っている。

時々自分の背骨が少しずつ溶けていく音が聞こえるような気がします。そして実際そのとおりなのかもしれません。
村上春樹風の歌を聴け』より)

この女の子の置かれた状況にそんな簡単に共感するなんて言えないけど、でも、これと似たような感覚、日々、歳をとるとともになにかが溶けていくような、その感覚はなんとなくわかるし、そしてそれはきっとそのとおりなんだろう。そんなときにけいおん!を観ると、彼女たちをうらやましく思うとともに、なんだか心が休まるのだ。
ただ、時間がとまってるかのような幸福な時を過ごしている彼女らも、時間の流れの中で生きていて、物語のなかでは1年が過ぎ、軽音部には新入部員の梓も入ってきた。もう第9話なので、ワンクールで終わりなのだとしたらもう終わりが近くって、それはとても残念でならないのだけど、でも、何だっていつか必ず終わりはくるのだから、せめて終わってしまうまではこの『けいおん!』というアニメを十二分に楽しみたい。