どうしようもないことがあることを自覚する

解 (Psycho Critique)

解 (Psycho Critique)

秋葉原通り魔事件の犯人である加藤智大が書いたもの。事件が起きた当初、報道等は加藤が派遣社員であることとかWEB上の掲示板に入り浸っていたことなどをとりあげ、社会への不満や孤独などを犯行の動機としてクローズアップしていた。そして識者とかいう人たちは「理解できない」などとしきりに述べていたが、友人とは「行為自体は全く許されるべき点がかけらもないけど、でも犯行に至るまでの経緯が報道の通りなら、その思考のプロセスそれ自体は必ずしも理解できないものでもないよね」などと話していた。どうしようもない閉塞感が時に人をそのように駆り立てることそれ自体にはそれほど違和感はなかったからだ。
数年が経ち、本人が書いたという本が出ているというのを最近知った。買う気は起きないが以前そんな話をしていたこともあり、ためしに図書館で借りて読んでみたのだが、そこに書かれていた動機は上記のようなものではなく、また理解できるようなものでもなかった。
この本から得られることをもし何か一つ挙げろと言われたとしたら。自分には全く理解できないような思考をする人間が存在していて、そしてときにそのような人間から何らこちらの責に帰すべき理由なく危害を加えられることがありうる、そのような世の中に生きていることをあらためて自覚できる点、それに尽きる。