踊りそして笑え(Dance and Laugh)
「踊れ」カラオケボックスで展開されるEXILEライブにおいてパフォーマーを拝命、奇妙奇怪な動きにて失笑という名の栄光を勝ち取ったことによる絶望感に満たされつつ乗った電車で寝過ごしてしまい、結果せっかくの休みの日の前日だというのに漫画喫茶で眠るという始末。しかし、そんな僕にも新しい朝はやってくる。早朝の4時台に漫画喫茶を出て始発に乗り(休日だというのに山手線はこんな時間から既に走っているのだ!そして既に沢山の人たちが乗っている!)、徐々に白んでいく世界に目を細めながら窓の外の移りゆく風景を眺めていると、なんだか不思議と笑いがこみあげてきた。なぜ笑いたくなるのかはよくわからないのだけど、でも、こんなことが前にもあったなと思い、二日酔いでボーリングの球のごとく重い頭をゆっくりと回して考えていたところ、同じように酒を飲み、電車を寝過ごしていままで降りたこともないような駅に降りた時のことだと思い出した。
東京と首都圏のある中核都市とをつなぐその路線のちょうど真ん中くらいに位置するその駅に降りたのは見る限り僕一人だった。周囲を見渡す限り工場や倉庫しかないため、こんな真夜中といってもいいような時間に降りる理由のある人など寝過ごした自分のような人間しかいないのだろう。幸いまだ上り電車はあったため、それに乗るべく人気のない夜の駅に一人佇んでいると、酒の酔いも徐々に醒め、周囲の暗闇が静かに体の中に染みこんでくる。夜って暗いものなんだな、とあらためて思った。その日の一日を振り返ろうとしたが、そのときはあまりよく思い出せなかった。上り電車がやってきた。人はまばらだった。座席はいくつも空いていたけれど、座るとまた眠ってしまうのではないかと思って、ドアの傍に立ち外を眺めていた。やがて海が見えてきた。海の向こうには、たくさんの高層マンションの灯りがこうこうと輝いていた。目の前のガラスにはみすぼらしい自分の顔が映っていた。そのとき、今日と同じように、なんだかわからないけれど無性に笑いがこみあげてきたのだった。
いつかこの笑いの理由がわかるのだろうか、それともずっとわからないのだろうか。まあ、どちらでも構わないけれど。