フルメタル・ジャケット

フルメタル・ジャケット [DVD]

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ベトナム戦争時、アメリカ海兵隊に入った若者たち。彼らの入隊前訓練からその後海兵隊に入りベトナムに派遣され、実際に戦争を体感するまでが描かれている映画。訓練のシーンに結構多くの時間が割かれている。以前話に聞いたことがあったハートマン軍曹は想像以上に凄かった。卑猥な言葉の嵐。あそこまで徹底されていると笑わざるを得ない。そんな低俗な罵詈雑言の集中砲火に耐えながら、若者たちは彼に絶対服従で、日々のありとあらゆる場面において管理されている。あんなだったらあのレナードではなくとも気が狂ってしまうだろう。実際のトレーニングもあんな感じで行われるのだろうか。もっとキツイのだろうか。軍というのはやはり日常とはかけ離れた異質な世界なんだ、ということをあの訓練風景を見て感じた。
後半の狙撃兵とジョーカーが対峙する場面では、彼の頭の中にはレナードのことが頭をよぎったりしたのだろうか、などと考えた。レナードも狙撃が上手かったからだ。ジョーカーはレナードをめった打ちにするときも一人逡巡していたし、戦場でも「born to kill」と頭に書き、胸には平和のバッチをつけていたから、多分まだ壊れきれていなかったのだと思う。でもあの動けない狙撃兵を撃ったことで、壊れてしまった。あの後の彼の顔を見て、そう思った。
ラスト、ミッキーマウスの歌がとても空虚なものに聞こえた。あの歌の中にはなにもなかった。空っぽだった。