水没ピアノ 佐藤友哉
ユヤタンの鏡家サーガ三作目。今までの読んだ3冊の中では一番よくできた1冊なのでは。考えて考えて考え抜いたあげくにやはり自分がダメなことに気付くのだけど、それでも自分が捨て切れなくてまたずっと考えて考えて――そうやって繰り返される思考のみで構成された救いのない迷宮に引きずり込まれていく登場人物達がとても痛いし暗い。3冊に共通するそんなユヤタンの個性が一番上手く表れていたと思います。読んでいる途中、胸の奥に微かに気分の悪さを抱きながらも最後まで読まずにはいられないのは何故だろう。感情移入? 共感? ……まさか。
ファウストVol.1か2の中の対談で、滝本竜彦とやりたいことが似ているのではないかと思った、とユヤタンが言っていたように記憶しているんですが、3冊読んでみて、確かに滝本竜彦に近い部分はあるように思いました。滝本竜彦や西尾維新が売れているのにユヤタンだけあまり売れていない(らしい)のはどうしてなのか。その二人に比べて作品内容が後ろ向き過ぎるからでしょうか。いいと思うんだけどなぁ、ユヤタソ。