暗闇の中で子供 舞城王太郎

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)
デビュー作の「煙か土か食い物」に続く2作目。今度は奈津川四郎に代わり奈津川三郎が主人公となって奈津川家の物語が語られていく。
四郎と三郎の性格の違いによるものなのか、本作は前作よりも内向きな感じ。生きることから目を逸らしていた三郎が、ユリオとの出会いや、家族を傷つけられたり失ったりすることを通して、最終的にあの特殊な状況下において生きることに向き合い生きることの素晴らしさに歓喜するラストは確かにグッとくるものがあった。約500ページにも及ぶ長編であるにもかかわらず一気に読ませてしまう疾走感のある文章もさすがだと思う。面白かった。
ただ、作品外で若干気になったのが背表紙の文句。圧倒的救済ってのは言い過ぎじゃないか? 読む前にそれを見てちょっと萎えた。
あ、最後に一つ。必ず前作の「煙か土か食い物」を読んでから本作を読みましょう。ネタバレしまくりだし、前作を読んでから読んだほうが絶対に面白いので。