青い車



よしもとよしとも原作のマンガは以前読んでいて、その原作を読んだときの感想が、

世の中って本当に理不尽で、でもみんなその理不尽さを認めたくないから、「努力すれば願いは叶う」なんていう馬鹿馬鹿しい幻想にすがってみたり、物事と物事の間に無理やり因果関係とか構築しちゃったりする。
だけど、どんなことをしたってやっぱり理不尽なものは理不尽でしかなくて、その理不尽さから何とか逃げるために、人と人は繋がる。それって弱いしダメかもしれないけど、まあ、それはそれでいいんじゃない? 神様なんて信じてるよりさ。

というようなものだった。とにかく「理不尽さ」とか「不条理性」というものが印象に残っていた。
そのような原作のイメージを持ちながら映画を観たのだが、なんか、原作に比べると人と人のつながりの部分が強調されているように思えた。
何かを失う、ということは、大抵の場合あまり嬉しいことではない。しかもその喪失が、故意ではないにしろ、もしかしたら自分のせいなのかもしれない、としたら。辛い。忘れてしまいたい。そのようなことに出会ってしまったのが、過去のリチオ(ARATA)であり、また、現在のこのみ(宮崎あおい)なのだろう。過去のリチオはアヒルのミッキーと傷のない自分の顔を失い、現在のこのみは姉を失った。
過去のリチオの場合は、誰も助けてくれる人がいなかったから、結果、リチオは無意識のうちに過去の自分を死んだものとして、なかったものとして、ずっと生きてきた。辛い思いをしながら。腕にカッターを幾度も当てながら。
でも、現在のこのみの場合は違った。リチオがいた。同じような経験をした、リチオが。だからラストの、

「俺が何とかする 心配すんな」

というリチオの台詞は心に響いた。
……そんな感想になるかしら、とか思ってたんだけど、正直あまり心には響かなかった。なんでかなあ。原作に比べてリチオがキレキャラだったせいか。原作ではもっとリチオに余裕あると思うんだけど。音楽はよかったし(ラストの高速道路のシーンの音楽はどうも合ってなかったように思うけど)、雰囲気も悪くないし、出演陣もかなりよいと思うのだが、何か全体的にアバウトすぎる。よくわからん。アバウトでも作ってる人間の頭の中に確固としたイメージがあって、それに基づいてアバウトに作られてればいいんだけど、この映画はそのイメージが詰められてない感じ。だから表層だけそれっぽくて中身があまりないように感じられた。惜しい。
ARATAは前にピンポンで見て「こいつカッコいいな」と思ってたけど、今回はなんか変な顔になってた。黒髪メガネのほうがずっと似合ってる。
宮崎あおいは可愛いね。今のNHKの朝ドラのみつあみ姿も可愛いけど、女子高生姿も可愛い。美人過ぎないところがいい。
長々と書いてしまったけどこんなところで。普通。ぼーっと観てる分には悪くない映画。短いし。