Speak more slowly,please.
ゆっくり喋ることにした。バイトのときに。今日もついさっきまでバイトで、今帰ってきたところなんだけれど、レジに入ってるときにずらっと並ばれるとなんかよくわからないけどもテンションが上がってきて、動作が高速になりそれにつれて早口になってしまうのだ。そのときのテンションとしては、町田康の『けものがれ、俺らの猿と』のラスト、
自分はとにかく頑張る。ここさえ乗り切れば道は必ず開けるのだ。この局面さえ乗り切れば俺は大暴れ、アンジーの如くに全人的に開放されて好き放題やってこます。と自らに言い聞かせ、一番最初に入ってきた三人連れの客が声高に焼き蕎麦を注文するのに、「焼き蕎麦三丁オッケー」と威勢よく返事したのである。
(町田康『けものがれ、俺らの猿と』より)
みたいな感じ。しかし早口になるとどうしても早口になろうとする自分と自分の身体、つまりは口との間に齟齬が生じることが多くなり、頭の中の言葉が口の動作速度を超える。つまり、言葉を噛んでしまう、のである。これは実に恥ずかしい。それにそもそも早口ってのはカッコ悪いような気がする。焦ってるというか落ち着きが無いというか。だから、これからは意識的にゆっくり喋ることに決め、思い立ったが吉日、ということで、さっそく今日のバイトから実践した。目の前に並ばれても焦らずに、ゆっくりと喋るのがここでのたしなみ。もちろん、テンパって噛んでしまったのを何事も無かったかのように処理するなどといった、はしたない店員など存在しようはずがないのである。しかし、手元がお留守になってますよ、などとはつっこまれないように。
その結果、心に大変な余裕が生まれた、ような気がする。ゆとりが出来た。これからもゆっくり喋るようにしようと思う。