神様のパズル 機本伸司

神様のパズル
K大学理学部物理学科の学生であるいまいち冴えない主人公と、ひねくれた天才物理少女が、宇宙はどうすれば造れるのか、という壮大な問いへの答えを探していくというSFノベル。題名の「神様のパズル」とは、「私は神様のパズルを解きたかった」というアインシュタインの発言によるもの。
SFというと、難しい語句、というか知らないカタカナワードが次から次へと出てきてイメージが追いつかなくなり訳が分からなくなってくる、ということが僕はたまにあったりするんですが、この作品は非常にそういう点で分かりやすく言葉を選んで書かれており、とても読みやすかったです。
宇宙はどう造るのかという問いから始まった物語は、やがて「自分」とは何か、という自身の存在意義を問うことへと繋がっていく。自分の発想力のなさに失望し、半ばひきこもりになっていた元天才少女がそれらの問題に出会い、それに立ち向かうことで成長していく様は、SFというよりも青春小説に近いように思います。読み終わったあと、心地よくなる小説でした。ハードカバーで結構ぶ厚い割に、サクサクと読めてしまうのは作者の巧さなのでしょう。ただ何となくつまらないなぁと思いながら毎日を送っている大学生なんかは読んでみるといいかもしれません。……え、僕ですか?
ところで、この話にも「天才」少女が出てきますが、最近天才の登場が多いですね。まぁ最近だけじゃないのかもしれませんが。S&Mシリーズの真賀田四季戯言シリーズの玖渚友とか。こういう人物が一人いると凡人との掛合いやなんかで上手く物語を書き進めていけるからなのかな。それにしても天才は何で性格が悪かったり変わっていたりするんでしょう。ただの天才みたいな人はいないのか。
そんなことは置いておいて、この作品は楽しめました。今度「メシアの処方箋」も読んでみようと思います。