青い鳥とか李徴の虎とか捨て去れ!

先日近くに住む従姉妹に赤ん坊が生まれ、今日その子に会ってきた。生後7日。とても小さい。寝かせたら座布団の上に収まってしまった。抱いてみる?と言われたけど、そんなの怖くて無理。本当に触れただけで壊れてしまいそうだから。完全なる無防備。人間がもっとも脆い状態。生後7日しか経っていなくてもきちんと爪は生えそろっているし、髪の毛も結構生えているのには驚いた。たまに瞼を持ち上げてその奥にある瞳が見える。生まれたばかりの赤ん坊の目は見えないらしいけれど、まるである晴れた冬の日の朝のようにその瞳は透き通っている。何だかその中に吸い込まれてしまいそうだと感じる。きっともう徐々に外界の情報を吸収する訓練が始まっているのだろう。
赤ん坊と接した後、無性にやる気がみなぎって「うおお!やっぱ世界って最高。生きるって素晴らしい!」みたいなテンションになるのだけど、すぐに自分を振り返ってその赤ん坊と自分とを対比して沈んでいく。僕はダメだダメだダメだ……。10月だか11月だかに叔父の2歳の子に会ったときも同じような感じになった。しかも今日は会いに行く前に中島義道の本「マイナスのナルシスの告白」を読んでいたため、その本による影響もそれに拍車をかけていたかもしれない。
まったく自分は本や他人の言動に左右されすぎると思う。もっと自分を持たないといけない。
自分。
「自分を持つ」というのは、別に政治やら経済やらに対して意見を持つとかそういうことをいいたいわけではないし、他人と違うことをしたいとか、そういうことでもない。何か、本当に何でもいいから自分に一本芯を通すというか、柱を立てるというか、そういうことだ。つまり自分の中に、ある明確な価値判断基準を置きたい、ということになるのだろうか。
自分を自己分析してみると、自分は割と「世間的には」要領がいい方だと思う。というか、実際そう言われたりする。本人はまったくもってそんなことないと思っているけど。例えば高校の推薦で有利になると考えて自分に合わない生徒会活動をしたり、浪人時にも結局「潰しがキク」から格別興味もない法学部を選び、1年のときはバイトやサークルを楽しくこなしながら単位も留年しない程度に適当に取った。こう記述してみると何ら問題ないように自分でも思う。「普通」だろうと。何を思い悩む必要があるのかと。
でも、そういった行動は自分の価値判断基準に基づいて行われた行為では全然ない。ただ問題に直面したときに、いくつかの予想される結末を頭に浮かべて、最もリスクの少なそうな道を「世間的に」判断して選んでいるにすぎない。だからそこに自分という存在はない。あっても限りなく希薄である。
そして最近徐々にその自分で自分を騙すかのような態度に対して腹が立ってきている。我慢が出来なくなってきている。そう思う。今までは誤魔化していけていたのにもかかわらず。大学に入って暇な時間が増え、一人でいる時間も増えたからかもしれない。少なくとも高校時代まではまったくこんなことは考えていなかったから。
だが、そうだからといって自分がその状況から抜け出してどうするのか、と問われると何も答えることが出来ない。だって自分の好きなこととか、そういうものなんてないのだから。周囲の価値判断基準を借りて生きてきた自分はもはや自分の好きなことすらわからなくなってしまっている。ゲームや本を読むことが好きだ、という気もしなくもないけれど、それだって周りの人間がそういうものを面白いと認識しているから自分もそれが面白いものだと思い込んでいる、ただそれだけ、という気もする。どうしようもないゆらぎがそこにある。わけがわからない。
他人と喋っている時だって、2分前、いや数秒前に喋った自分の言葉が間違っていたことに喋っている間に気づき、自分の馬鹿さや浅はかさに嫌になるときがある。そしてその結果気づけば相手に何の影響も与えないような話しか出来ないようになる。そして自分というものはまたそこから消えていく。何なんだ。
上記のような文章を書いていても、これはただ中島義道の本を色々読んで中島義道の言葉を借りているだけで結局自分は何も考えていないのではないか、本当はこんなこと考えていないのではないか、とも思ってしまう。そうじゃない!考えているんだ!と、もちろん自分は思うわけだけれど、そうじゃないとも言い切れない。言い切る自信がないからだ。そして、その疑いがどこまでも続いていく。エンドレス。
ただ自分がわがままなだけなのかもしれない。期待をしすぎているのかもしれない。逃げているだけなのかもしれない。全ていいわけなのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。自分の価値判断基準なんて放っておけばいいんだ。理屈に従って一生懸命勉強して優を取り、サークルで熱血して、彼女とか作ったりして人生を楽しまなければならない。そのためにはエンドレスの鎖を断ち切らなければいけない。終わらせる必要がある。
断ち切らなければいけない。
断ち切らなければいけない。
理屈では、断ち切らなければいけないのだ。間違いなく。
わかっている。
わかっているさ。
わかって……



ビールの500ml缶を2本空けてもまったく眠れず気がつけば翌日の5時になってしまったのでこんな文章を書いてしまいました。それにしてもMOONサントラNIGHTSIDEの5曲目「銀の糸つむぎ歌」はやばい。泣ける。どこの場面で使われてる曲だろう。リピートリピート!