プラトーン

戦争真っ只中のベトナムに降り立ったのは、自ら志願してやってきた青年テイラー。初めは「何が起こってるか知りたい」とか「貧しい人だけが戦争に行くのはフェアじゃない」などとお金持ちのインテリらしく理念に燃えているが、過酷な状況下の中で起こる出来事を経験し、人間というものの秘める狂気に触れることで、彼自身も大きく変化していく。そんな彼の目を通じてベトナム戦争が語られているのがこの映画である。オリバー・ストーン監督自身のベトナム戦争経験が色濃く反映されているらしい。
本編を見終えた後に見た特典映像のドキュメンタリームービーの中で、誰かが、「この映画は冒頭からして凄くなると思ったよ」みたいなことを言っていたが、僕もそれは思った。だって、ベトナムに初めて降り立った、正義感や情熱に満ち溢れた新兵であるテイラー青年を出迎えてくれるのは、次々と運ばれてくる死体袋なのだ。イメージでしかなかった戦争がリアリティを帯びたものへと一気に姿を変える。現実が目の前に突きつけられる。その後、当然のように普通に考えてみれば「ありえない」ようなことが次々に起きていく。テイラーが泣きながら銃を発砲して足が不自由な青年を威嚇するシーンとそれに続く撲殺シーン、エリアスとバーンズがジャングルの中で対峙するシーン。このあたりが特に強く印象に残った。最後の夜戦場面も圧巻。目を見開いてただただひたすら画面に見入っていた。見終わった後は放心状態だった。「すげー」と思った。
戦争というものと、人間というもの。その2つを一面的にではなく、簡単に評価することの出来ないような、様々な感情の入り混じった複合体として描ききったこの映画はスゴイ。とても面白かった。廉価版DVDが出ているようなので、今度買ってきてもう一度見ようと思う。それだけの価値がある、あのプラトーンという映画には…。