小説を読むことはたくさんの人生を生きるということ
もう10年くらい前、民法総則の担当教授が講義中にこんなことを言っていたのを覚えている。
「みなさんはよく小説を読みますか? 民法を学ぶ、いや法律を学ぶにはたくさん小説を読んだほうがいいと私は思います。法律は人のために作られたものです。それを学ぶには、まず人をよく知ることが大切です。あなたの人生は一度きりです。たくさんの人生を経験することはできません。しかし、小説を読むことでたくさんの人生を生きることができるのです」
Steve Jobsの伝記は、この言葉を思い出すのにふさわしいものだった。そこには確かに彼の人生があった。この本に書かれていることが、きっと他人から見た彼の人生とは違う、「彼の人生」にもっとも近いものなのだろう。具体的なエピソードが多く、そのときの彼の心情や周りの人たちの当時の思いなどもふんだんに描かれているので、まるで自分もその場にいるのではないかと思ってしまうくらい熱中し、電車で読んでいたら最寄駅を乗り過ごしてしまっていたこともあった。それくらい充実したこの本を読み終えてしまったことをとても残念に思うとともに、Steve Jobsという人がこの世の中からいなくなってしまったことをとても残念に思う。亡くなったというニュースを知ったときよりも、ずっとそう思う。あれだけ気難しくて、わがままで、でもそれ以上に魅力にあふれ、その力を注ぎ込んだ多くの製品によって世界を変えてしまった彼は、もう、この世界にはいないのだ。
彼が人生を注いで作り上げた製品のひとつ、iPhone4がいま僕の手元にある。おそらくヘビーユーザーとはとうてい言えないだろうが、でも、いまではiPhone4のない生活というのはちょっと考えられない。彼がいなくなってしまった後のアップルがどのような製品を作っていくことができるのかはわからないけども、いまはただ、この素晴らしいiPhone4という製品を使えていることが幸せだ。本当に、ありがとう。

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