世界は終わらない/益田ミリ
益田ミリといえば「すーちゃん」シリーズであり、自分もとても好きなマンガの一つなのだが、この「世界が終わらない」は、すーちゃんが働いていたカフェの横にある本屋で働く土田くんの話である。
土田くんは書店員歴10年で、今の1Kのアパートに7年住み続けながら、毎日書店に通う日々を送っている。彼女はなく、また仕事もそれほど変わり映えはしないものの、それに満足してないというわけではない。でも、ふと、
「オレの人生 こんなはずじゃなかった とは思わない でもって こんなもんだろう とも思わない」
というようなことを考えてしまう。じゃあ一体何なんだというと、土田くん自身もよくわからない。わからないことには手の打ちようもなく、何かをするというわけでもなく日々を生きていく。しかし時折、夜空を見上げながら、「オレの人生の意味ってなんなんだろう」と自問する。その後にはいつも「な~んて」と茶化すようにして。
土田くんの考えてるようなことって自分もよく考えたりするけれど、日々の中に埋もれていってしまい結局忘れてしまうことが多い。でも、益田ミリはありふれた日常の中で、普通なら忘れ去られてしまうような、ふと思ったり考えたりすることを表現するのがめちゃくちゃ上手い。あと、「いい」とか「悪い」とかそんな単純な話ではない「いいとも言えないけどでも別に悪いともいえないしよくわからない」みたいなモヤモヤした感情を色々な表現を使いながら的確に表現してしまうのですごいなと思う。男性の土田くんが主人公だったからかもしれないけど、「すーちゃん」シリーズよりも今回のこの本の方が自分は共感するところが多かったです。とても面白かった。この本はキレイに終わっているのでおそらく続編はないだろうけど、土田くん自体は「すーちゃん」シリーズに今後も登場しそうなので、楽しみだ。