志摩子さんの笑い

幕間的な巻だった。本筋は特に進展なし。そういうのも嫌いじゃないので別にいいといえばいいのですが、そろそろ話を進めて頂きたいなあ、という気持ちがないと言ったら嘘になる。
白薔薇好きの僕は、ああ平和ボケの志摩子さんも本当に可愛いなあハァハァなどと思いながら「白薔薇の物思い」を読んでいたのですが、最後の志摩子さんの笑い声について若干の違和感が。あの笑いは多分、志摩子さんが「自分達は平和だなあ」と思っていたときに祐巳が深刻そうな面持ちで「何か悩み事があるなら相談して」と言ってきたから、そのギャップが面白くて志摩子さんは笑ったのだろうと思うんですけど、それにしても笑いすぎだろうと思う。志摩子さんのキャラじゃないような気がする。妹の乃梨子がしっかり者だから、志摩子さんの幼稚化が進んでいるということなのだろうか。幼稚化というのは言葉がどうもしっくりこないので、自分の凝り固まった思考から徐々に解放されつつある、とでも言ったほうがいいかもしれない。実の兄との話のなかでも、今もシスターになりたいのか?という問いかけに対して、「わからない」と答えているし。この志摩子さんの変化は、志摩子さんの成長物語としてとらえるのであれば実に喜ばしいことだと思うけれど、今までの志摩子さん好きとしては手放しでは喜べないというか何というか。それは志摩子さんだけじゃなくて、祥子も同じような感じなんですけど。みんな普通の女子高生化が進んでいる気がします。親しみやすさ向上。まあそれは他の生徒達と同じように交流すべきだ、ということを望んでいた蓉子の願いが実現された山百合会なのかもしれないので素晴らしいことかもしれない。だけど、旧(旧!)山百合会の幻想に憧れていた僕のような人間は、この山百合会の変化に、1人取り残されてしまっているような、そんな心持になりました。
志摩子さんは志摩子さんのままでいて欲しい、そう思ってしまうのは、僕のエゴ。