羅生門

羅生門 デラックス版 [DVD]

羅生門 デラックス版 [DVD]

この間心理学の授業で中で、「記憶」というテーマが扱われており、「記憶というのは、その後に起こった出来事や、その前に起きていた出来事、あるいはその人の感情などによって簡単に変容していくもので、では本当に起きたことがいったい何なのか、というのは分からないこともある」というようなことを先生がおっしゃられていた。ふーん、と軽く聞き流していたが、羅生門を見て、上記の話をふと思い出した。
この映画はある一つの出来事に対する4人(3人+幽霊?)の話が全く食い違っている、と、そういう話で、芥川龍之介の「藪の中」という短編が原作になっている。原作と違うのは、映画では最後に4人目の発見者の話があること。これがあることで、映画はテーマが明確になってるように思う。
嘘、っていうのは嘘をつくつもりがなくても、つい口から出てしまったりすることは結構ある(のではないかと僕は思う)。嘘をつこうと思ってつく嘘もある。それは例えば自己保身の為だったり他人をかばう為だったり、まあ色々な理由がある。そんなわけで、世の中、嘘をつこうと思っていようがいまいが、割と嘘というもので満ち溢れている。だからといって純情に「人間なんて信じられん!」と言って家にひきこもってりゃそれでいいのか?というとやはりそうではなくて、それでも人を信じていくところに、そこに人間のよさがあるんだよね……、と、そういうことをきっと映画版羅生門はテーマにしたんだろう。一方小説のほうは、確か、「何がなんだかよくわからん、いったい何が本当なんだ?」というのが読後の感想だった。
ただ、どちらにも共通してる点、というか、まあどちらからも感じ取れることは多分、「本当のこと」なんてそんなに大したものじゃない。ということなんじゃないか。人の記憶なんて簡単に変わっちゃうものだし、「本当のこと」それ自体に価値はないよ、という。そうだよね。と僕も思う。